コラム2025.10.16

コンサルファームに残るべき人、フリーランスで独立すべき人

キャリアの岐路に立つコンサルタントのあなたへ

コンサルティングファームで経験を積み、マネージャーへの昇進が見えてくる頃、多くのコンサルタントがキャリアの大きな岐路に立ちます。

「このままファームに残り、パートナーを目指すのか」「あるいは、フリーランスとして独立し、自身の才覚を試すのか」

どちらの道にも魅力と厳しさがあり、唯一の正解はありません。大切なのは、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、自身の価値観やライフプランに合った選択をすることです。本記事では、両者のリアルな実態を比較し、後悔のないキャリア選択をするためのヒントを提供します。

「ファーム残留」vs「フリーランス独立」徹底比較

比較軸ファーム残留フリーランス独立
報酬・安定性安定した給与と福利厚生。昇進すれば高収入だが、成果は組織に還元成果がダイレクトに高収入に直結。案件がなければ収入ゼロという不安定さと隣り合わせ
働き方の自由度組織のルールに従う必要がある。長期休暇は取りやすいが、裁量は限定的働く時間、場所、仕事内容を自分で決められる。プロジェクトの合間に数ヶ月の休暇も可能
業務内容・責任大規模、超上流の戦略案件に携わる機会が多い。チームで動き、最終責任は組織が負う特定の専門性を活かしたハンズオン支援※が中心。すべての意思決定と結果責任を個人で負う
成長・キャリアマネージャー、パートナーへの明確なキャリアパス。組織マネジメントの経験が積める専門性を深く掘り下げるスペシャリスト志向。経営者としての視点が身につく

こんなあなたは「ファーム残留」が向いている

安定した環境で、大きな挑戦をしたい方

国の政策に関わる公共案件や、数千億円規模のPMI※など、個人では到底関われない巨大プロジェクトに魅力を感じる方。

組織を動かすマネジメントに興味がある方

チームメンバーを育成し、組織全体を率いることにやりがいを感じる方。将来的にファームの経営を担うパートナーを目指したい方。

こんなあなたは「フリーランス独立」が向いている

自分の実力で稼ぎ、自由を手にしたい方

組織の評価制度ではなく、自身の市場価値で報酬を決めたいという成果主義の方。働く時間や場所を自分でコントロールし、人生の主導権を握りたいと考える方。

現場に入り込み、ダイレクトな貢献を実感したい方

クライアントの現場に深く入り込み、自らの手で変革を成し遂げることに喜びを感じる方。組織の看板ではなく、「個」としてクライアントから感謝されることに、何よりのやりがいを見出す方。

あなたの「ものさし」でキャリアを測ろう

ファームに残る道も、独立する道も、どちらが優れているというわけではありません。重要なのは、あなたが何を大切にし、どのようなプロフェッショナル人生を送りたいかという「あなた自身のものさし」で判断することです。

安定か、自由か。ゼネラリストか、スペシャリストか。組織での成功か、個としての成功か。

この機会に一度立ち止まり、ご自身の心の声に耳を傾けてみてください。この記事が、あなたの後悔のないキャリア選択の一助となることを心から願っています。

※ ハンズオン支援:クライアントの組織に入り込み、自ら手を動かしながら実践的に課題解決を支援するスタイル。
※ PMI:M&A成立後に行われる経営統合プロセス。

【残留派】コンサルファームで輝き続ける人の3つの特徴

フリーランスという選択肢が一般的になった今、あえてコンサルティングファームに残り続けることには、どのような意味と価値があるのでしょうか。独立を選ぶ同僚が増える中で、ファームでこそ自身の能力を最大限に発揮し、輝き続ける人材には、明確な共通点があります。

ここでは、ファームに残留し、パートナーへとキャリアアップしていく人に共通する3つの特徴について解説します。

①「個」より「組織」の力で、巨大な山を動かしたい人

国家レベルの政策提言や、グローバル企業全体の経営改革といった、社会に巨大なインパクトを与えるプロジェクトは、依然として組織の力なくしては成し遂げられません。

志向性ファームでこそ得られる経験
大規模・超上流案件へのこだわり数千億円規模のM&A※後の統合プロジェクト/政府機関に対する産業政策の立案支援/グローバル企業の全社DX戦略策定
最先端の知見へのアクセスファームが持つ世界中の拠点から、最新事例やナレッジがリアルタイムで集約。まだ誰も挑戦したことのないテーマの案件に携われる

個人では決してアクセスできない規模のプロジェクトや、ファームのグローバルネットワークが生み出す最先端の知見に魅力を感じる人は、ファームというプラットフォームを最大限に活用し、輝かしい実績を築くことができます。

②「プレイヤー」だけでなく「監督」としても成功したい人

自身のスキルで課題を解決する「プレイヤー」としての喜びに加え、チームを率い、人を育て、組織を動かす「マネジメント」にやりがいを見出す人は、ファーム残留が向いています。

チームビルディングの醍醐味

多様なバックグラウンドを持つ優秀なメンバーを集め、一つのチームとして機能させ、大きな成果を出す。このプロセスは、まるでオーケストラの指揮者のような醍醐味があります。

人材育成という投資

自身が育てた部下が成長し、やがてファームを背負って立つ存在になっていく。これは、短期的なプロジェクトの成功とは異なる、長期的で大きな喜びと達成感をもたらします。

ファームに残ることは、コンサルタントとしてのキャリアパスだけでなく、ピープルマネジメント※のプロフェッショナルとしてのキャリアを歩む道でもあるのです。

③「安定」と「体系的な学び」の環境を重視する人

ファームが提供する環境具体的なメリット
安定した基盤安定した給与、充実した福利厚生。案件が途切れる心配なく、目の前の仕事に集中できる
体系的な学習機会最新のテクノロジーや経営理論に関する質の高い社内研修。海外研修やMBA留学支援制度など、自己投資を組織がバックアップ

フリーランスの学びが「自己流のサバイバル術」になりがちなのに対し、ファームでは体系的かつ継続的にスキルをアップデートできる環境が整っています。

ファームに残ることは、決して守りの選択ではありません。それは、組織という強大な力をテコにして、個人では成し得ないスケールの大きな価値を創造するという、極めて戦略的かつ野心的なキャリア選択なのです。

※ M&A:企業の合併と買収。企業の成長戦略の一つ。
※ ピープルマネジメント:部下のモチベーション管理、能力開発、評価などを行う人材マネジメント。

【独立派】フリーランスとして成功する人の3つの特徴

コンサルティングファームという安定した船を降り、フリーランスという大海原へ一人で漕ぎ出す。それは大きなリスクを伴う一方で、他では得られない自由と可能性に満ちた選択です。

独立の道を選び、成功を収めているコンサルタントには、共通したマインドセットや志向性が見られます。ここでは、フリーランスとして成功する人に共通する3つの特徴を解説します。

①組織のしがらみより「個人の成果」を最大化したい人

ファームに所属していると、クライアントワーク以外にも様々な「組織貢献活動」が求められます。フリーランスとして成功する人は、純粋にクライアントへの価値提供と、それに伴う自身の報酬を最大化することに強い意欲を持っています。

志向性フリーランスの働き方との親和性
クライアントへの価値提供に集中したい部下の育成、社内研修の講師といった「ノンチャージブル(非課金)」な業務から解放。自身の時間の100%を、クライアントの課題解決というデリバリー※に注力できる
成果と報酬をダイレクトに結びつけたいファームの評価制度を介さず、自身の市場価値が直接的に高単価として反映される

「自分の成果は、100%自分のものとして享受したい」。このプロフェッショナルとして純粋な欲求を持つ人は、フリーランスという働き方で大きな満足感を得ることができます。

②特定の「専門性」を突き詰めたいスペシャリスト

ファームでは、会社の戦略やアサインの都合で、必ずしも自分の希望する分野のプロジェクトに携われるとは限りません。一方、フリーランスは自らの意思で「戦う領域」を選ぶことができます。

「深さ」を求める志向

ゼネラリストとして広く浅く経験を積むよりも、「この領域なら誰にも負けない」という特定の専門分野を深く掘り下げたいというスペシャリスト志向の強い人。

案件内容へのこだわり

「SCM改革の案件しか受けない」「金融機関のDX案件に特化する」といったように、自身の専門性を武器に、やりたい仕事だけを選び取る。これにより、専門家としてのブランドを確立し、高単価で指名される存在になることができます。

重要なのは、案件を「自分で選べる」という点です。自身のキャリアプランに基づき、戦略的に仕事を選びたい人にとって、フリーランスは最適な環境です。

③「自由」を愛し、その「責任」を引き受けられる人

フリーランスの最大の魅力は「自由」ですが、その自由は常に「自己責任」と表裏一体です。

側面内容
自由(メリット)働く時間、場所、休日を自分で決められる。プロジェクトの合間に数ヶ月の長期休暇も可能
責任(デメリット)高い自己管理能力が必須。案件がなければ収入ゼロ。営業、経理、法務といったバックオフィス業務※も全て自分で行う

会社というセーフティネットがない環境で、自らを律し、ビジネスのあらゆる側面を一人でマネジメントする。このスリリングな状況を「プレッシャー」ではなく「裁量」として楽しめる精神的なタフさと自律性を持つ人こそ、フリーランスという生き方を謳歌することができます。

結論

もしあなたが、組織の論理よりも個人の実力で勝負し、自らの人生のハンドルを100%自分の手で握りたいと強く願うなら、フリーランスへの挑戦は、あなたのキャリアをより輝かせる素晴らしい選択となるでしょう。

※ デリバリー:クライアントへの報告や提案、その活動全般。
※ バックオフィス業務:経理、人事、総務、法務など、事業活動を支える管理部門の業務全般。

【独立派】フリーランスとして成功する人の3つの特徴

ファームに残るべきか、独立すべきか――。このキャリアの大きな岐路に立ったとき、多くの人が他人の成功事例や外部の声に惑わされがちです。しかし、最も重要なのは、あなた自身の「心の声」に耳を傾け、自分だけの価値観を明らかにすることです。

そこで、あなたの本心を映し出すための「5つのチェックリスト」を用意しました。それぞれの質問で、AとB、どちらがより自分の感覚に近いかを考えてみてください。

あなたの価値観を明らかにする5つの質問

質問Aの選択肢Bの選択肢
Q1 キャリアの「安定性」安定した給与と福利厚生のもと、安心して大きな挑戦に集中したい(→ファーム向き)収入ゼロのリスクを負ってでも、成果次第で青天井の報酬を得たい(→独立向き)
Q2 仕事の「看板」「〇〇ファームの一員」として、組織のブランド力を武器に巨大なプロジェクトを動かしたい(→ファーム向き)「個人の〇〇さん」として、自分の名前と実力でクライアントから直接信頼を勝ち取りたい(→独立向き)
Q3 理想の「働き方」チームメンバーの育成、採用活動といったノンチャージブル業務※も含め、組織全体に貢献したい(→ファーム向き)組織貢献活動から解放され、100%クライアントへの価値提供(デリバリー※)に集中したい(→独立向き)
Q4 「学びのスタイル」体系化された研修プログラムや、グローバルな最新知見にアクセスできる環境で学び続けたい(→ファーム向き)案件ごとに必要なスキルを自ら定義し、実践の中で泥臭く学び取っていくサバイバルな環境を楽しみたい(→独立向き)
Q5 キャリアの「道のり」マネージャー、パートナーといった明確なキャリアラダー※を駆け上がり、頂点を目指したい(→ファーム向き)決まったゴールはなく、専門性を深めたり、複数の事業を立ち上げたりと、自分で道を創っていく自由を求めたい(→独立向き)

チェックリストから見えるあなたの「本心」

「A」に多くチェックがついたあなたは、組織というプラットフォームを最大限に活用することに価値を見出すタイプです。安定した基盤の上で、個人では成し得ないスケールの大きな仕事や、組織マネジメントに挑戦することに大きなやりがいを感じるでしょう。

「B」に多くチェックがついたあなたは、自分の実力と才覚を試し、人生の主導権を自分の手に握りたいと願う、強い独立心を持ったタイプです。自由と引き換えにすべての責任を負う覚悟があるあなたは、フリーランスとして大きな成功を収めるポテンシャルを秘めています。

最後は「ワクワクする方」を選ぼう

このチェックリストは、あなたの思考を整理するための一つのツールです。どちらの選択が優れているというわけではありません。

最終的に大切なのは、どちらの未来を想像した時に、あなたの心がより「ワクワクするか」です。論理的な分析はもちろん重要ですが、キャリアという長い旅路においては、自身の情熱や直感もまた、信頼に足る羅針盤となります。

この記事が、あなたが自分自身の本心と向き合い、自信を持って次の一歩を踏み出すきっかけになることを心から願っています。

※ ノンチャージブル業務:クライアントへの請求が発生しない社内業務。
※ デリバリー:成果物の納品やその活動全般。
※ キャリアラダー:企業内での職位の階層構造、昇進の道筋。

どちらの道も正解。自分だけのキャリアを築こう

これまで、コンサルタントが直面するキャリアの岐路、「ファーム残留」か「フリーランス独立」かというテーマについて、それぞれの特徴や向き・不向きを多角的に解説してきました。

この記事シリーズを読み終えた今、どちらかの道への確信が芽生えたでしょうか。それとも、まだ迷いが残っているでしょうか。

どちらにせよ、まずお伝えしたいのは、「どちらの道も正解であり、不正解はない」ということです。最も大切なのは、あなた自身の価値観やライフプランに合った、納得感のある道を選ぶことです。

選択を超えた「プロフェッショナルとしての共通原則」

どちらの道を選んだとしても、コンサルタントとして長く活躍し続けるために必要な「共通の原則」が存在します。

共通原則ファームでの実践フリーランスでの実践
①価値提供へのこだわり組織のブランド力と知見を活用し、クライアントの期待を常に上回るアウトプット※を追求する個人の専門性を武器に、クライアントの課題解決に徹底的にコミットし、目に見える成果を出す
②終わりなき自己研鑽体系的な研修やグローバルな知見を活用し、スキルセットを継続的にアップデートする市場のニーズを敏感に察知し、生き残るために必要な知識やスキルを貪欲に学び続ける
③人としての信頼構築上司、部下、クライアントなど、全てのステークホルダー※に対し、誠実なコミュニケーションと行動を徹底する約束を守る、品質に妥協しないといった基本的な行動を通じて、クライアントからの「個」としての信頼を勝ち取る

結局のところ、場所が変わっても、価値を生み出し、学び続け、信頼される人間でなければ成功できないのです。

「二者択一」ではない、多様なキャリアパス

また、「残留」か「独立」かという二者択一で考える必要もありません。キャリアの選択肢はもっと多様で、柔軟です。

  • 出戻り戦略:一度フリーランスとして独立し、特定の専門性を深めた後、マネジメント経験を積むために再びファームに戻る
  • 事業会社への転身:コンサルティングで培った問題解決能力を活かし、事業会社の経営企画や新規事業開発の責任者として参画する
  • 起業:フリーランス活動の中で見つけたビジネスチャンスを元に、自ら事業を立ち上げる

一度選んだ道が、終着点ではありません。キャリアは、その時々のあなたの状況や価値観に合わせて、ピボット(方向転換)することが可能なのです。

あなたの選択を「正解」にしよう

キャリアの岐路に立ち、深く悩むことができるのは、あなたがこれまで真剣に仕事に向き合い、確かな実力をつけてきた証拠です。どうか、そのことに誇りを持ってください。

ファームに残ることも、独立することも、どちらも素晴らしい挑戦です。大切なのは、選択した後に「この道を選んで良かった」と思えるよう、自らの手でその道を「正解」にしていく努力を続けることです。

この記事が、あなたが自分だけのキャリアを築くための、自信に満ちた第一歩を踏み出す一助となれば、これほど嬉しいことはありません。

※ ステークホルダー:プロジェクトに関わるすべての利害関係者。

About Us

この記事の著者

ラックスフリーコンサル編集部

外資系大手コンサルティングファーム出身。現在は、フリーランスITコンサルタント・PMO専門エージェントを運営し、多くの方のキャリア形成を支援しています。自身の経験から、高単価案件の獲得術やクライアントとの交渉術、市場価値を高める戦略などを熟知。このブログを通じ、案件成功からその先のキャリアまでを見据えた、フリーコンサルタントとして成功するための情報をお届けします。

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